新型コロナウイルスの感染力と病原性 - 再考

RSウイルスの流行が季節はずれに起こっています.週当たりの感染者数でみると1年前からずっとほぼ0だったわけですが,今年の1月前後から増え始め,例えば大阪府では4月のピーク時には700人/週となっています.各都道府県の週当たりのRSウイルス感染者数のデータです(https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr.html).

大阪府はCOVID-19感染の多くが変異ウイルス(N501Y)に置き換わっています.私は以前にウイルスの変異は感染力上昇,病原性低下の方向に動くと言いましたが,ちょっと様相は異なっています.申し訳ありません.少しだけ言い訳をすると,どんどん死者が増えてしまうような方向に変異したウイルスは自然淘汰されるという意味でした.その観点で,以下に大阪府の感染者数と死者数を第1波~第4波にかけて眺めてみたいと思います.

表に示したように,明らかに感染者数は増えました.しかしながら,RSウイルスの流行の状況を見ると,この感染者の増加は必ずしもウイルスの感染力が増えたとばかりは言えない気がします.昨年は全く見られなかったRSウイルスの流行が起こっているということは,人の動きが活発になったということだと思います.きっと2020年12月あたりから,我慢に我慢を重ねてきた日本人もさすがにというところでしょうか? 

COVID-19感染 大阪府の実態

 

第1波

第2波

第3波

第4波

ピーク感染者数/日

88

255

654

1260

 ピーク日

2020/4/18

2020/8/7

2021/1/8

2021/4/28

ピーク死者数/日

5

9

23

55

 ピーク日

2020/5/20

2020/8/28

2021/1/27

2021/5/11

死者数/感染者数(%)

5.7

3.5

3.5

4.4

 ピーク日のずれ

32

21

19

13

 

子どもたちに感染しやすくなったと言われますが,そうでしょうか? RSウイルスの流行はRSウイルスの変異によるものでしょうか? おそらく人流が増加して,子どもたちの交流が増えて,子どもたちだって堪忍袋の緒が切れて,RSウイルスの流行が起こり,COVID-19の感染が目立つようになっているのではないでしょうか.子どもたちが,COVID-19に限らず新型ウイルスに強い免疫を持っていることは当然なので重症化は基本的に考えにくいと思います.

この表から見て重症度についてはどうでしょうか? 第2波や第3波と比較すると少し死者数割合が多いようにみえます.変異ウイルスが影響しているのかもしれません.COVID-19感染症に対する治療に熟練してきているのに,重症化(ここでは死亡者数ですが…)の割合が変わらないのはやはり病原性が上がっているからかもしれません.しかし,大阪府医療崩壊が取り沙汰されましたが,それが影響しているかもしれません.一日当たりの感染者数は,重症化に対しての要因(バイアス)となりうるということです.そして第3波と第4波で治療の熟練が大きく変わったとも思えませんが,現場の先生方はいかがですか? 感染者のピークと死者のピークの間隔が短くなっているのは,感染後の経過が違うのかもしれません.潜伏期も短くなって通常の風邪ウイルスに近くなっているのかもしれませんが,経過が早くなるのを重症と考えるならばそうなのかもしれません.

初期からわかっていたことではありますが,“堪忍袋の緒が切れて”きた日本人にとって感染の終息を起こせるのはワクチン接種を広げるしかありません.日本のCOVID-19施策の最大の(というより唯一の)失策はワクチンの出遅れで,これは厚生労働省に責任があると思います.