以前にPCRの特異度を90%で計算しました.今回はこの特異度を99%と考えて検討してみます.
事象A:COVID-19に感染している.
事象A*:COVID-19に感染していない.
事象B:PCR陽性である.
事象B*:PCR陰性である.
一番外の四角は,検査を受けた人全体です.
条件付確率という概念があって,簡単なので理解してください.
P(B|A)というのは,事象Aが起こったという前提で事象Bが起こる確率を示します.
今回知りたいのは,P(A|B)で,事象Bが起こったという前提で事象Aが起こる確率,つまりPCR陽性であったときにCOVID-19感染を起こしている確率です.
ところでベイズ定理は,よく考えていただくと難しい定理ではないので,また学んでください.式としては…
P(A|B)=(P(B|A)×P(A)) / (P(A*)×P(B|A*)+P(A)×P(B|A))
です.
- まず現状です.検査陽性率7%とします
P(B|A):COVID-19感染者がPCR陽性となる率(つまり感度)…7
P(A):陽性率に当たります.例えば7%としてみます…0.07
(P(A*):0.996
P(B|A*):COVID-19感染者ではないのにPCR陽性となる率(つまり1-特異度)…0.01
計算すると…
P(A|B)=(0.7×0.07) / (0.996×0.01+0.07×0.7) = 0.83 - 次に積極的にPCRをやって陽性率を3%としたとします
P(B|A):COVID-19感染者がPCR陽性となる率(つまり感度)…7
P(A):陽性率を3%としてみます…0.03
(P(A*):0.996
P(B|A*):COVID-19感染者ではないのにPCR陽性となる率(つまり1-特異度)…0.01
計算すると…
P(A|B)=(0.7×0.03) / (0.996×0.01+0.03×0.7) = 0.68 - 国民みんながPCR検査をやったとします
P(B|A):COVID-19感染者がPCR陽性となる率(つまり感度)…7
P(A):罹患率です.陽性者(5万人)のおよそ10倍だと思うので,50万人とします.日本人の人口は1億2000万人なので,割り算をして0.004です.
(P(A*):0.996
P(B|A*):COVID-19感染者ではないのにPCR陽性となる率(つまり1-特異度)…0.01
計算すると…
P(A|B)=(0.7×0.004) / (0.996×0.01+0.004×0.7) = 0.22
本質的には以前にやった計算方法と同じなのですが,特異度が90%→99%となっています.
「PCR陽性のあなたが,本当にCOVID-19に感染している可能性は?」という問いに対しては…
PCR検査をどの程度に広めるかによって変わります.
- 検査陽性率を7%程度にすると,答えは83%
- 検査陽性率を3%となるまで広めると,答えは68%
- 国民全体に検査すると,答えは22%
もちろん,これ以外にも根拠はありますが,とにかく皆さん,誤らずにPCR検査を拡大すべきか否か判断してください.私は,個人的には,医師が必要と考えた場合に検査ができる体制が良いと思います.