腎臓小児科医のためのワンポイントレッスン

「腎臓病小児のマネジメント 実践のための数学的アプローチ」という本を,2011年に初版,2016年に第二版を上梓しました.是非とも腎臓小児科医は読んでいただけると嬉しいです.

しかし,言い足りないことはたくさんたくさんあります.日記的に上げていき,若手の腎臓小児科医に読んでもらえると嬉しいです.だから,時々更新していきます.

 

 

2020年11月20日

“治療方針を決定するのは,医師ではなく患者家族である”

これは腎臓小児科医に限ったことではありません.医師がやるべきは,患者家族が決定できるようにという意識をもって自分の知っていることを全て伝えるつもりで情報提供することです.

全ての意思決定は患者家族だと思いますが,生死にかかわるような場合は特にそうだと思います.がん患者だけではなく,腎臓小児科領域でもそのような場面に遭遇します.医師は医療的な知識は一般の方より当然広く深いと思いますが,死生観,人生観,そして人間としては一般の方より優れているとは限らず劣っていることも多々あります.だからこそ,十分な情報を伝えて,患者家族に彼らの人生観に従って決定していただくのが正当なことだと思います.医師の治療に対する考え方はしっかり伝えますが,それに従わず,別の選択をされることは正当なことです.驕りを捨てましょう.驕りは,正当なプライドのない人の態度です.

 

腎臓病小児のマネジメント 改訂第2版 実践のための数学的アプローチ (臨床クリップ)
 

 

2020年11月26日

Ca, P再考(骨粗鬆症や骨ミネラル代謝異常)

自分は重症心身障害児者施設にいますが,最近2例の急性腎障害(AKI)を起こした事例があり,どちらもアルファロール投与を開始したために起こりました.数カ月で起こったわけですが,アルファロール中止とともに腎機能は改善傾向となりました.カルシウム高値が両例共に見られました.1例は腎実質に異所性石灰化がありました.

 

  1. Ca,PとビタミンD
    ビタミンDの作用は,小腸におけるカルシウム吸収や腎臓におけるカルシウムの再吸収を促進して血中のカルシウム濃度を一定に保つことで,結果的に骨へのカルシウムの沈着を促します.つまり,ビタミンDには造骨に向けての骨への直接作用はありません.ところが,血中のカルシウム濃度が低下した場合には,血中カルシウム濃度を保とうとして,活性型ビタミンD(1,25-(OH)2ビタミンD)の合成が高まり,PTHと共同して骨からカルシウムを溶出し,血中のカルシウム濃度の恒常性の維持に寄与します.つまりCa不測の状態では,ビタミンDは骨吸収を起こして骨塩量を下げる可能性があります.これはビタミンDの骨への直接作用です.この時,活性型ビタミンDの血中濃度は通常の状態に比べて高い濃度を保っています.実は,活性型ビタミンDである1,25-(OH)2ビタミンDはビタミンというよりホルモンと考えたほうが良いということです.
    もう一度整理すると,ビタミンDの活性化刺激は低カルシウム血症であり,ビタミンDの効果は血中カルシウム濃度を上げることで,決して骨塩量を増やすことではないということです.すなわち,ビタミンDの骨形成作用は血中カルシウム濃度上昇を介した間接作用で,骨吸収作用は直接作用ということになります.骨形成が必要と生体が考えているかどうかとビタミンDの動きは別次元です.
    少し別の視点で考えてみます.細胞外液のCa,Pの関係はシーソーのように,Caが高いとPが下がり,Caが低いとPが上がります.PTHが働こうがカルシトニンが働こうがこの原則は保たれ,PTHが上昇するとCaが上昇してPは低下します.生体内で細胞外液中のCaもPも上昇させる物質は活性型ビタミンDのみです.そしてCaもPも上昇すると,骨であろうがどこであろうが(心血管系が多いですが)石灰化が進みます.後で説明しますが正所性石灰化も異所性石灰化も起こるわけです.その時に生体が骨を作ろうと考えていれば正所性石灰化を中心に石灰化が起こります.
  2. 生体が骨を作るかどうかを決める因子
    子どもたちは,十分な栄養が入る状況下では,遺伝子に規定された最終身長を獲得します.この成長という生理は骨の作り替えとして作動します.成長過程においては,成長ホルモン,性ホルモンなどの分泌を遺伝子によって設計されたプログラムによって行い,そのプログラムに規定された身長になるわけです.後述しますが,成長ホルモンや性ホルモンによって骨の作り替えが命令されるわけです.骨側の感受性も遺伝的に規定されています.そして成長スピードが大きければ大きいほどCa,Pの必要量が増すわけで,成長期には1,25-(OH)2ビタミンDが合目的的に高くなっているはずです.つまりCaがたくさん使われ,補充するために1,25-(OH)2ビタミンDは高くなるわけです.前述したようにホルモンですから.骨折時にも同じようなことが起こるはずです.
    骨粗鬆症について考えてみましょう.骨細胞はスクレロスチンと呼ばれる物質をもって伝達し作り替えを指示します.スクレロスチンは,「骨芽細胞」の数を減らすという作用があります.スクレロスチンは骨量を減らすわけで,骨粗鬆症を引き起こします.骨細胞には「骨にかかる衝撃を感知する」という働きがあり,衝撃(重力を含む)があるかないかによって,新しい骨を作るペースを決めています.骨に衝撃がかからない状態が続くと,骨細胞がスクレロスチンを出して,骨芽細胞の数を減らして骨形成をやめて骨粗鬆症を引き起こします.これも合目的的です.このような状態で血中Ca,Pが高くなると,正所性に石灰化は起こり得ず異所性石灰化に進みます.
  3. ビタミンD欠乏で起こること
    ビタミンD欠乏症で低リン血症がおこると、骨の石灰化に必要なハイドロキシアパタイトが形成できなくなり、骨の石灰化不全を生じます。この低リン血症による骨の石灰化不全が、骨端線が閉鎖する前に起こるとくる病を発症します。くる病では,低身長,そして下肢に負担がかかると足の骨が変形します。成人では骨の石灰化不全から、柔らかい類骨という成分を多く含む骨ができ、この病態を骨軟化症といいます。骨粗鬆症は骨量が減りますが,骨軟化症では骨量は減らず骨量に占める類骨が比率的に増えて石灰化骨が減っている状態です.
  4. 骨粗鬆症ビタミンD
    上記の通り,ビタミンD欠乏と骨粗鬆症とは別次元の病気であり,ビタミンDが骨形成に直接かかわるわけではありません.骨形成が起こるような状況(成長時や骨折治癒時)にCaが不足しないように1,25-(OH)2ビタミンDがあたかもホルモンのように増加して血中Caを増加させて助けるといったイメージです.骨粗鬆症は,生体として合目的的に骨塩量を下げる状態ですから,ビタミンDを投与したからと言って骨形成には傾きません.不要にCa,Pが上がるわけですから,骨以外に石灰化が起こります.ビタミンD骨粗鬆症に有効ではなさそうであることはJAMA[1]から論文が出ています.
  5. 重症心身障害者や水泳選手の骨粗鬆症
    重症心身障害者も水泳選手も重力がかからず,骨に衝撃がかからないという点で骨形成が起こりにくく骨粗鬆症が起こります.これは普通に考えれば合目的的で,水の中で生活することや寝たきりであるがために骨を強くする必要がない状況が起こってしまっています.この状態でビタミンDを摂取し血中Ca,Pを上昇させると,骨が必要としないために全身様々なところで石灰化が起こってしまいます.データは知りませんが,水泳選手にビタミンDを飲ませても骨粗鬆症を防ぐことはできないと思います.
  6. 生理的にCa,P値が高い状況(含.骨折)と正所性石灰化
    実際に血中Ca,Pが生理的に高い状態は乳児期(1年間に身長が25㎝伸びます)や思春期(ピークで1年間に10-12cm伸びます)で,あとは骨折の治癒期です.測定したことはありませんが,この時期はきっと1,25-(OH)2ビタミンDが高いと思います.このような場合には血中Ca,Pが高くても正所性石灰化が起こり異所性石灰化は起こりません.しかし,成長が止まった後に同じくらい血中Ca,Pが高い状態が起こると正所(骨)は要らないので他の場所に石灰化が起こることになります.
    因みに何度か経験したことがあるのは,小児腎臓外来に肉眼的血尿で来られたお子さんたちで,非糸球体性血尿に高カルシウム尿症があり近い過去に骨折を起こしているというような症例で,骨折が治ると高カルシウム尿症とともに血尿もおさまるといったものです.決して少なくないので,意識していると必ず経験します.
  7. 異所性石灰化
    これは自分の30年ほど前の経験です.7歳の腹膜透析中の女児が移植を希望して転院してきました.転院時にCTで確認すると心臓,脳,大血管,腎臓に石灰化があり,Ca・P積は95以上でした.長期にアルファロールと炭酸カルシウムを内服していました.2週間後にプレールームでテレビを見ていて突然亡くなりました.剖検をさせていただいたところ心筋にびっしりとカルシウム沈着がありました.
    当時の教科書の慢性腎不全のところに,処方例としてアルファロールと炭酸カルシウムの量が書いてあり,それに従って投与されていたわけです.決して前医を責めることはできません.ただ当時感じたのは,腎臓小児科医と腎不全小児科医はきちんと分けなくてはいけないと感じました.冷静に考えると,末期腎不全は腎臓がない(腎臓の働きがほぼ無くなった)時に起こる全身病です.それなのに腎臓に特化されたお医者さんが見るのは奇妙ですよね.30年前の話でしたが,今はあってはならないと思います.この管理ができないとしたら腎不全の医者はやめて,腎臓小児科医として頑張っていただくべきです.次に詳しく述べます.
  8. 骨ミネラル代謝異常の管理
    CKDステージ4や5(かなり末期腎不全に近い状態)では,骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)が起こってきます.二次性副甲状腺機能亢進症(Ⅱ°HPT)や腎性くる病などが病態としては起こるわけですが,腎からのCaの喪失や,腎でのビタミンD活性化(1位に水酸基をつける)ができないためです.
    腎不全小児科医としてCKD-MBDを管理するのに最も重要なことは何でしょうか? 副甲状腺機能亢進症やくる病も重要な合併症ですが,比べ物にならないくらい大切な合併症(医原病)を絶対に防ぐことです.それが異所性石灰化です.私が経験した症例のように心血管系を中心に起こし致死的となります.
    腎性くる病は何年かかけて起こってきて,ひどいO脚を起こした低身長の原因になりますが,成長している間は修正の効くO脚です.命にかかわることもありません.ということは腎性くる病の治療をするためにビタミンDを投与することはありません.ビタミンDには,PTHを抑制する力があるのでよく使われます.しかしこれも慌てることはなくゆっくり補正していけばよいわけです.
    最も重要なことは,高カルシウム血症アルブミン値に注意してくださいね)を絶対に起こさないこと,Ca・P積の高い値を放置しないことです.つまりビタミンD製剤の投与やカルシウム製剤の投与で,医原的な異所性石灰化を起こさないことです.ここには食餌性にPの摂取に気を付けることも含まれます.
    高カルシウム血症や高Ca・P積を起こすくらいならば,Ⅱ°HPTや腎性くる病のほうがずっとずっとましです.そして,骨ミネラル代謝異常の管理に自信がないならば是非とも腎不全小児科医(専門医)に紹介しましょう.

 

 [1] L.A. Burt, E.O. Billington, M.S. Rose, D.A. Raymond, D.A. Hanley, S.K. Boyd, Effect of High-Dose Vitamin D Supplementation on Volumetric Bone Density and Bone Strength: A Randomized Clinical Trial, Jama 322(8) (2019) 736-745.

 

アビガンと橋本文書

5月に一度掲載したのですが,「アビガンと橋本文書」を削除してしまいました(*_*;

実は自分の所属する名古屋市立大学小児科同門会の今年の同門会誌に,このブログの橋本文書のことを載せていたことに気が付いて再掲することにしました.

 

内容は,COVID-19に対するアビガンの使用について

  1. 添付の橋本文書に従って適応外使用するのは医師の裁量で良いのではないか.
  2. 新型インフルエンザを適応とした添付文書に従って,妊婦や精子への影響を考慮して投与するのは医師の責任の下である.

というような内容だったと思うのですが…

以下に橋本文書を貼り付けておきます.

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橋本文書

 

子育てー小児発達外来を始めて1年ー

一宮医療療育センターで小児発達外来を始めて1年が経ちました.

1年間に学んだこと,感じたことを整理してみたいと思います.

自閉スペクトラム症ASD)を説明するためのキーワードは,1.不安・恐怖,2.不器用,だと思いました.それぞれを個別に,また絡ませながら説明したいと思います.

この内容はASDの児だけでなく,きっとすべての子育てをするお母さんにも役立つと思います.

 

  1. 不安・恐怖

    周りからは不適切と思われ,叱られてしまうような様々な行動も,本人の心の中は不安や恐怖でいっぱいです.叱らなくてはいけない場面もあると思いますが,本来するべき対応は優しく抱きしめて「怖かったね」と声掛けすることです.
    不安・恐怖を感じる中枢は脳の深い部分にあり古い脳である扁桃体で,この私たちの意志が及ばない部位に不安の中枢があります.不安・恐怖はなぜ必要なのでしょうか? これは痛みといっしょで,動物が生きるために必要なものです.不安・恐怖を感じたら,逃げなくてはいけないかもしれないし,戦わなくてはいけないかもしれません.不安や恐怖を感じて即座に対応できる動物が生き残るのです.しかし,人間はそうでなくても生き残れる安全な世界を築いたので,生き残り(進化)にその能力は不要となりました.ただし,きっと格闘家や兵士にとっては重要な能力なのでしょう.不安・恐怖を感じた時の反射的な反応はパニックと呼ばれます.パニックは,突発的な不安や恐怖によっておこる混乱した心理状態と定義されますが,むしろ原始的な反射に近いもので反射が身体的ではなく心理的なものであると言ったほうが良いのかもしれません.兵士にとっては瞬間的に不安・恐怖を感じるから行動が起こり生き残ることができるわけですし,野生の動物にとっても同様です.

    パニックをイメージするのに役立つように,お母さんに以下のような話を良くします.
    「お母さんは山の中を一人で歩いていて周りに人は全くいません.少し離れた道に熊が現れました.どうしますか?」,『逃げます』.
    「では,熊が目の前に現れました.どうしましょうか?」,うーん,としばらく考えながら,『固まってしまいます』.
    「では,もう一つ.熊はお母さんに襲い掛かりました」,『何もできないな~』,「食べられるままですか?」,『やっぱり抵抗するかな』.
    この3つが不安や恐怖でパニック状態にある時に人間(動物)がとる行動です.つまり,①逃げる,②固まる,③闘う,の3つです.
    これらは,大脳でじっくり考えて冷静に反応するというものではなく反射に近いもので,その中枢は大脳辺縁系扁桃体です.ここから指令が、脳幹部の青斑核など自律神経の中枢に伝わり、ノルアドレナリンが分泌されて、血圧を高め、心拍数を上げます.前頭前野は,扁桃体の不安・恐怖を制御する方向に働きます.

    聴覚過敏を持つ子のお母さんによくするお話
    生まれたての赤ちゃんは,自分が人間であることも,どんな時代に生まれてきたかも,現代の人間社会が基本的に安全であることも知りません.その新生児は家に帰り初めて掃除機の騒音を聴きました.自分は鹿かもしれないし,この雄叫びは自分を食べてしまうライオンかもしれないわけで,扁桃体に入ってきた情報で大きな恐怖を感じ泣き叫びます.しかし,この騒音が連日聴こえてきても,何も危険なことは起こらず,いっしょにお母さんの優しい声が聞こえてきます.少しずつ学習して(慣れて),そのうちに泣くこともなくなってしまいます.しかしASDの子どもたちは慣れることに不器用で,慣れるまでに時間がかかります.だからまだ不安や恐怖を感じているのですね.

    非常に強い人見知りがある子,知らない人に近づくことを嫌がる子のお母さんへのお話
    知らない人に初めて出会うことは大人でも緊張します.大人はその人はどんな人だろうか,優しい人かな怖い人かな,仲良くできるかな等と考えます.その子たちにとっては,新たな人と接すると何をやられるかわからない,何が起こるかわからないという不安や恐怖が募ります.そのために起こる逃げる,固まるといった行動がパニック状態だと思います.この時も本人は不安・恐怖を持っているので,少なくともご両親はそのことを理解してあげて,近づくこと・やりとりすることを強いて子どもを傷つけないようにしましょう.
    人との距離が非常に近い子のお母さんへのお話
    知らない人でも近づいて行って挨拶するなどの行動は,相手に嫌な思いをさせないかと親は冷や冷やします.(そういう子も,他人から距離を縮められることは嫌がることが多いです) 普通に大人が経験することで近い状況は,何人かで会話中の長い沈黙とかではないでしょうか.ついつい不安になり,どうでもよいこと・不必要なことをしゃべりだしたりしてしまいます.子どものこのような距離の近い行動も本人は何らかの不安・恐怖を感じていて,彼らなりに不安と闘っている,あるいは自分は仲間だから何もしないでねと言っているのかもしれません.ただし,パニックは反射的に起こることなので何故かは本人にもわからないと思います.

    変化を嫌い,こだわりの強い子のお母さんへのお話
    新しい環境や初めて顔を合わせる人などは大人でも不安なものですが,この子たちは新しい環境が安全な場所であるということに慣れることに不器用で時間がかかります.いつも同じ服でなくてはいけなかったり,ズボンは嫌でスカートしか穿かなかったりする子もいます.このような場合は,子どもたちは今からいつもと違うことが起きるのではないかと不安になります.このような場合も,逃げたり固まったり闘ったりします.様々なこだわりを無理矢理やめさせようとすることは子どもたちを傷つけます.

    不適切な行動を叱らなくて良いのかという質問に対して
    叱る時の基準は,①本人に危険のある時,②周囲の人に危険のある時,③大人になってやったら犯罪的だなと感じる時(例えばみんなの集まりで裸になって踊る)だと思います.この子たちの苦手なことの一つが重みづけです.絶対にいけないことを叱っても,どっちでもよいかなと思うようなことで叱っても,どちらも同等に響きます.たくさん叱る場面があるとどうしたらよいかわからなくなってしまいます.たまに注意するから,やってはいけないことが理解できるのです.だから,お母さんが腹立たしいことが起きても数秒待って,本当に注意すべきことかどうかを考え,必要ならば冷静に注意しましょう.注意が染みつくには時間がかかるので同じような場面で繰り返し冷静に注意しましょう.

    ここまで述べてきたように不適切な行動を起こすときの本人の心中は不安・恐怖であるという親の理解が重要です.子犬がぶるぶる震えていたらどうしますか.このようなときにやってあげなくてはいけないのは優しく抱いて「怖くないよ」と言ってあげることです.このことはまた後述しますが,子どもたちの自尊感情を育てることに役立ちます.もちろん,叱る基準に当てはまる時は,しっかり注意してからにしてください.

  2. 不器用

    この子たちは様々な点で不器用です.
    周りの人たちと円滑にコミュニケーションをとること,適切な距離を保つことに不器用です.
    不安・恐怖を与えるような感覚(音,におい,触れた感覚など)に慣れることに不器用です.
    新しい環境,新しい人,何らかの変化に慣れることに不器用です.
    大きな運動(体幹,上肢,下肢を使う運動)や細かい運動(指先を使うような運動)が不器用です.
    車の運転なども苦手であるかもしれません.車の運転は複雑です.周りの車,人の動き,街の構造,信号,横断歩道,道路標識などヤマのような視覚情報,救急車の音,子どもの声,バイクの音などの聴覚情報などの感覚情報を瞬時に判断して,ハンドル操作,アクセル操作,ブレーキ操作等々を瞬時に行います.このように多くの感覚を統合して重み付け(例えば多くの情報から左から飛び出してきそうな幼児の情報が一番重要と判断)をして次の行動を決定するということには大きく器用さが絡みます.
    感覚統合訓練は,運動面の不器用さ(発達性協調運動障害)を軽減するための手法ですが,運動だけではなく上記した様々な不器用さに効果があることを期待して行います.

  3. 言葉とパニック

    英語の苦手なお母さんを,日本人の全くいないニューヨークの街で1ヵ月間一人にした時を考えてみましょう.生活場所と生活資金は渡しておきます.お母さんはお腹がすき,リンゴを食べたくなりました.見つけておいた市場に出かけました.店員Aさんが近づいてきて流ちょうな英語で声をかけます.さっぱりわからないのでほしいものを“アップル”と言ってみましたが全く通じません.繰り返しているうちに店員Aさんは呆れた顔をして離れていきました.お母さんは悲しくなるし,情けなくなるし,不安になるし,どうしてよいかわかりません.腹も立ってきました.いわゆる“パニック”です.そこへ別の店員Bさんがやってきました.”Apple?”, “Orange?”, “Grape?”と発音してくれますがやっぱりわかりません.そして奥に入り10種類の果物を箱に詰めて戻ってきてお母さんに見せてくれました.中にリンゴがあったのでお母さんは喜んで指差し,指で3を示して3つほしいことを伝え,買い物を完結することができました.しかも店員Bさんは”Apple”の発音も丁寧に教えてくれました.その後お母さんはこの店を訪れるようになり,店員Bさんと仲良く会話するようになり,1ヵ月後には片言の英語をしゃべるようになりました.
    ここには2つのポイントがあります.コミュニケーションは言葉以外にもいろいろ方法があり,やり取りができるようになることで,コミュニケーションは楽しいものだと感じてもらえるようになるということです.言葉はコミュニケーションの一つの道具でしかありません.例えば,百人一首をすべて覚えている幼児がいたとして,おそらく意味は十分には分かっていないので,ゲーム的には有りですが,コミュニケーションを楽しむために言葉があるという本質を分かってもらうこととはかけ離れてしまいます.もう一つのポイントは,その人の理解できる範囲よりわずかに高いことを学ぶことが学習のポイントでありコツであるということです.次の項でもそのことを説明します.
    その前に,言葉の苦手な子どもたちに対する対応をお話しします.お母さんとのコミュニケーションが不完全で,お母さんの言うことが分からない,本人の言うことをお母さんが理解してくれないという状況が起こると,彼らは不安になりパニックになったり中でも癇癪になったりする子もあります.その時のコツは先ほどの市場の店員Bさんの対応です.本人が二語文しかしゃべらないとします.その子に十分に伝えることのできる文章はせいぜい三語文までです.お母さんがしっかり伝えたいときは二語文を中心にせいぜい三語分までにしましょう.彼らの言っていることが分からない場合は,視覚を利用し(果物を箱に詰めてくる),できるだけ具体的に選択肢を上げたりすることです.もしもわからなくてもお母さんが一生懸命理解しようとしていることは伝わります.一見お母さんが言っていることが分かっているように見えても不完全であることも非常に多いです.突然離席してお母さんに近づいてくるような場合は,先生の言っていることが分からない可能性があります.また,子どもたちはどこかで,“なんで”,“どうして”と聞くようになります.物事に理由があることを理解し理由が気になるようになったからです.しかしそのような行動をまだしない子どもたちにとっては,まだ理由は重要ではありません.大人はついつい,“……だから……ということになるのだから,……しなきゃダメじゃない”などと長い文章でしゃべりがちです.理由を聞いているうちにお母さんが伝えなきゃいけないことは彼らにはわからなくなってしまいます.そのような時期には理由を抜いてお母さんが伝えたいことを端的に伝えてください.

  4. 授業中の態度

    お母さんを,大学の物理学の講義に1学期間出席してもらうことにしましょう.お母さんは物理が苦手です.毎日5時間講義を受けることになります.ところが黒板に書かれる内容もさっぱり理解できず,先生の話す内容もちんぷんかんぷんです.おそらくお母さんはプチパニックになり,ぼーっとしたり,漫画を読み始めたり,居眠りし始めたり,仲間とお話ししはじめたり,教室を抜け出してキャンパスで遊んだりするでしょう.周りから見ると,彼女はわんぱくでいたずら好きで困った学生のレッテルを張られます.似たようなことは小中学校の教室でも起こっています.さっぱりわからない授業を聞き続けることはだれにとっても苦痛なことです.決して彼女に問題があるわけではなく,このような講義を与えた大学側に問題があるわけです.繰り返しますが,その人の理解できる範囲よりわずかに高いことを学ぶことが学習・教育のポイントでありコツです.どんどん難しい課題を与えることは逆効果です.皆さんも成功体験が次に進むエネルギーになりますよね.

  5. 自尊感情

    自尊感情ASDの子どもたちを含めて,すべての子ども,すべての人たちが社会で健全に生きていくためには非常に大切な,“自分自身を価値ある者だと感じる感覚”です.“ありのままの自分を受け入れることのできる感覚”で自分を大切に思えるかということです.深層の自尊感情と,表層の自尊感情とがあると言われています.
    “深層の自尊感情”は,基底的で,幼児期から小児期早期(3歳前後までが重要と言われています)に主に両親との関係から育まれるもので,両親から、唯一無二のものとして愛され、何を犠牲にしてでも守られる、両親にとって何者にも代えがたい価値のある人間であると思われることにより育まれ、しかも壊れにくいもの剥がれにくいものです.人生全体を通しての人格を形作り,ストレス耐性を決める盾となるものです.
    対して,“表層の自尊感情”は,小児期後半から形作られるもので,友人・恋人から愛され、男性であれば外見的に男らしく体格が大きくなり魅力的になり、勉強やスポーツができるようになって他者から評価されることなどによって形作られるものですが、変化しやすく剥がれやすいものです.
    幼少期の両親の姿勢がいかに重要で,その子の人生を決めてしまう(良い学校に入るか出世するかという意味ではありません,社会で柔軟にしなやかに強く生きることができるか,しかも他者を尊重できるかどうかです)かをわかっていただけると思います.
    ASDの子どもたちは,様々な場面で自尊感情が育ちにくい環境があります.例えば園で,別の子どもが抱きついてきました.感覚に過敏のあるこの子は不安・恐怖を感じ,その子をどついてしまいました.周囲から見るとその行動は,乱暴でやんちゃでわんぱくに映るかもしれません.しかし,起こったことは不安や恐怖により反射的に起こった行動です.悪意はありませんでした.クマに襲われた大人が,クマを傷つけたとして動物愛護協会からバッシングを受けるということはありません.その別の子には謝ったうえで,本人には“怖かったね,心配いらないからね”と抱きしめてあげることが大人が本来必要な行為でしょう.しかし,厳しく叱られると彼らには大きなトラウマとなり,このようなトラウマが彼らに繰り返されます.
    園の中で,先生が消防車の絵を見せながら,救急車といいました.その児は“消防車だよ”と繰り返し修正しようとします.しかし先生はそのまま話を進めていきました.その児にとってはこの間違いを修正せずに通り過ぎてしまうことは許せないことで不安で仕方ありません.先生を責めるつもりはありません.このような場面でもこの児は傷ついてしまいます.彼らの最大の長所は“正直”です.空気を読むより正直であることがずっと優先されます.“正直”であった場面では彼らをほめてあげましょう.大人になった時の目標は,正直で素直であることです.空気を読むことが苦手であることは持続する彼らの特質であるかもしれませんが,正直で素直でかわいい人だねと評価を受けることは社会で生きていくためには重要なポイントです.素直であるためには,自尊感情が育っていることがすごく重要です.前出の園の先生に十分な自尊感情が育っていたらきっと“消防車”と“救急車”の言い間違いは“素直”に認めることができたはずですね.

 

是非とも,これらを子育てに生かしてもらえると嬉しいです.表面的にやり方を覚えることだけではあまり役に立ちません.動物の一つとしての人間の本質を理解して,子どもたちが楽しく有意義で傷つきの少ない人生を生きることができるようにお手伝いしてあげましょう.

 

文責:一宮医療療育センター 上村治

PCR陽性のあなたは本当にCOVID-19に感染しているのだろうか? ―ベイズ定理を使って―

以前にPCRの特異度を90%で計算しました.今回はこの特異度を99%と考えて検討してみます.

事象A:COVID-19に感染している.

事象A*:COVID-19に感染していない.

事象B:PCR陽性である.

事象B*:PCR陰性である.

 

一番外の四角は,検査を受けた人全体です.

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条件付確率という概念があって,簡単なので理解してください.

P(B|A)というのは,事象Aが起こったという前提で事象Bが起こる確率を示します.

今回知りたいのは,P(A|B)で,事象Bが起こったという前提で事象Aが起こる確率,つまりPCR陽性であったときにCOVID-19感染を起こしている確率です.

 

ところでベイズ定理は,よく考えていただくと難しい定理ではないので,また学んでください.式としては…

P(A|B)=(P(B|A)×P(A)) / (P(A*)×P(B|A*)+P(A)×P(B|A))

です.

  • まず現状です.検査陽性率7%とします
    P(B|A):COVID-19感染者がPCR陽性となる率(つまり感度)…7
    P(A):陽性率に当たります.例えば7%としてみます…0.07
    (P(A*):0.996
    P(B|A*):COVID-19感染者ではないのにPCR陽性となる率(つまり1-特異度)…0.01
    計算すると…
    P(A|B)=(0.7×0.07) / (0.996×0.01+0.07×0.7) = 0.83
  • 次に積極的にPCRをやって陽性率を3%としたとします
    P(B|A):COVID-19感染者がPCR陽性となる率(つまり感度)…7
    P(A):陽性率を3%としてみます…0.03
    (P(A*):0.996
    P(B|A*):COVID-19感染者ではないのにPCR陽性となる率(つまり1-特異度)…0.01
    計算すると…
    P(A|B)=(0.7×0.03) / (0.996×0.01+0.03×0.7) = 0.68
  • 国民みんながPCR検査をやったとします
    P(B|A):COVID-19感染者がPCR陽性となる率(つまり感度)…7
    P(A):罹患率です.陽性者(5万人)のおよそ10倍だと思うので,50万人とします.日本人の人口は1億2000万人なので,割り算をして0.004です.
    (P(A*):0.996
    P(B|A*):COVID-19感染者ではないのにPCR陽性となる率(つまり1-特異度)…0.01
    計算すると…
    P(A|B)=(0.7×0.004) / (0.996×0.01+0.004×0.7) = 0.22

 

本質的には以前にやった計算方法と同じなのですが,特異度が90%→99%となっています.

 

PCR陽性のあなたが,本当にCOVID-19に感染している可能性は?」という問いに対しては…

PCR検査をどの程度に広めるかによって変わります.

 

  • 検査陽性率を7%程度にすると,答えは83%
  • 検査陽性率を3%となるまで広めると,答えは68%
  • 国民全体に検査すると,答えは22%

 

もちろん,これ以外にも根拠はありますが,とにかく皆さん,誤らずにPCR検査を拡大すべきか否か判断してください.私は,個人的には,医師が必要と考えた場合に検査ができる体制が良いと思います.

 

 

「Withコロナ」の定義

医療の世界では,議論を進めるときに言葉の定義を明確にしなくてはいけない.

 

「With ころな」の定義はどうだろうか?

正確には,

① “新型コロナウイルスとの共存・共生を意味する価値観・世界観”

だろう.

基本的には,このような弱毒のウイルスについては,人類との共生・共存以外の方策はなく,完全に駆逐することは無理なので,他の価値観という選択肢はない

 

しかし,誤解されて使われる可能性があるのは,

② “新型コロナウイルスは怖いウイルスではないので,普通の生活に戻していこうという活動”

ととらえられる可能性があり,またスウェーデンのように,

③ “自然の摂理に任せ,個人個人の判断に任せて,自然に集団免疫の獲得が起こることを期待する価値観”

を意味している場合もある

 

このように,曖昧な言葉を流布することは非常に危険なことである.

①の意味でつかわれるならば,これは他の選択肢のない必然の内容である.

②の意味であるならば,COVID-19が怖いウイルスではないことを科学的に証明し,それであれば指定伝染病(二類感染症)から外してしまうことが必須条件である.

③の意味で使うならば,国として国策であることを宣言しなくてはならない.

 

日本では,2020年7月22日から国土交通省が「Go toトラベルキャンペーン」を実施した.日本語の得意な曖昧さ,日本の美徳とされる奥深さは,科学や今回のような明確な判断が必要な場面では悩ましい.

皆さん,「With コロナ」を使う場合は,どういう意味で使っているかを明確にしましょう.

COVID-19の進化について

久しぶりのブログ更新です.臨床研究に関係ないのでしばらくしたら消してしまいます.

 

COVID-19肺炎は,約6時間で既感染細胞から新たな感染細胞を作り,1日でウイルス増殖の4サイクル分のスピードで感染が肺内で広がると考えられるそうです.

 

一応倍化スピードは6時間と考えてみます.人間の倍化スピードは25年くらいでしょうか? とするとウイルスは人間の36500倍のスピードです.COVID-19が発生してからの変異(進化)の期間を人間換算すると,例えば1年は人間の3万年以上にあたります.

 

“美人薄命”という諺を考えてみましょう.男性は結婚相手を考えてみます.他の条件は全く一緒で,4つのカテゴリーに分けます.1.美人/健康,2.美人/不健康,3.不美人/健康,4.不美人/不健康の4人がいたとします.どの人を結婚相手で選択するでしょうか? この順かもしれませんし,2と3が逆かもしれません.もし,不美人で不健康という遺伝子があったとしたら淘汰されてしまう可能性が高いです.とすると不健康な人は美人である可能性が高くなります.すこし“美人薄命”を理解できませんか?

 

高Na血症に対する動物としての対応は,Naを捨てるのではなく水を増やして薄めるという活動が生体で起こります.今はポテチを食べすぎて高Na血症が起こります.製塩はいつから始まったのかは知りませんが,原始人が高Na血症を起こすのは食塩の取りすぎではなく日射病などで高張性脱水を起こした場合と考えられます.哺乳類としての進化を考えて,仮に高Na血症時に①Naを捨てるものと,②水を増やして薄める(口渇やADH)ものがいたとしたら,間違いなく後者が生き残りますね.

 

COVID-19は恐らく哺乳類(人間)と比べて変異(進化)は何万倍も速いと考えられます.進化の方向は,結果的には種の生き残りやすさでしょうが,これは結果であり「感染力が高く弱毒のもの」が生き残り,進化ということになるのでしょう.現在と3月前後のウイルスでは,当然質が変わっていることが予想されます.同じ対策で良いとは考えにくいですよね.第一波より第二波で重症者・死亡者が少ない理由もそこにあるのかもしれません.もちろん油断は禁物です.

 

因みに,我が一宮市の情報です.現時点(7月29日)までの全PCR陽性者数は64名ですが,7月28日時点では58名でした.この中を整理すると,重症者:0名,中等症者:4名,軽症者:46名,無症状者:8名です.重症者0%,中等症者7%で,軽症者/無症状者:93%でした.肺炎があると中等症者になっているようです.4月までの第一波が30名で,残りの28名は7月に入ってからです.

年代では,70代が4名(中等症者:1名,軽症者:2名,無症状者:1名),60代が3名(軽症者:3名)でした.

濃厚接触が明確なものは28名(中等症者:1名,軽症者:19名,無症状者:8名)でした.日本人の自然免疫が強いという説(自然免疫説)がありましたが,自然免疫で駆逐して無症状で済むというということだとしたら,接触して検査してしかも無症状だったのは29%なので,この説は間違っているのではないかと思います.日本人が感染しにくい,重症化しにくいという理由が,環境ではなく個体側にあるとしたら,別に理由がありそうですね.

アビガン臨床試験を想像してみよう

1.今回のアビガン臨床試験の臨床疑問,研究疑問を考えてみよう
臨床疑問:アビガン5日間投与は新型コロナウイルス駆逐に有用か
研究疑問:
 【患者】  PCR陽性の軽症コロナ感染者
 【介入群】 アビガン5日間投与(投与群)
 【比較群】 アビガン非投与(非投与群)
 【評価】  6日目のPCR

 

2.症例数86例の設定は,どうやって考えられたか
おそらく非投与群は,6日目はPCR陽性のはずだがPCRの感度を70%と想定して,陽性者:陰性者を7:3と考えた.そして,投与群の7割がPCR消失となれば有効と臨床医が考えたと仮定しよう.2×2の表を比率でみると…

 

6日目陰性

6日目陽性

投与群

7

3

10

非投与群

3

7

10

10

10

20

 この比率の効果量φは0.40となる. これで,α誤差0.05,β誤差0.20として,症例数設定をしてみる. G*powerを使うと,症例数は82例となります.86例とは少し違いますが,近い計算をしたのではないかと思う.

3.最終的には検定力80%で証明できる

研究者の想像が当たり,およそこの比率で研究が終了したとします.総数は簡単のために80例としました.β誤差の設定のおかげで少し余裕が出て,少し比率が低いような以下の分布でもp=0.013で有意にアビガン有効となります.

 

6日目陰性

6日目陽性

投与群

24

16

40

非投与群

12

28

40

36

44

80

 

  1. 現在の状況はどうか
    まだ半数の40例しか検討できていません. 中間解析で,40例で検討してみました.本来はやるべきではないと思います.有害事象が出たかどうかを検討することが重要でした.しかし検討してみたところ,3.と同じ比率だったとします.この場合p=0.111で有意にアビガン有効とは言えませんでした.これであれば最終的に有効であるといえる可能性が高いです.症例数を倍まで増やせば,上の結果になることが予測されます.

 

6日目陰性

6日目陽性

投与群

12

20

非投与群

6

14

20

18

22

40

 

  1. しかし,このような結果にはならないかもしれません.何が問題かというと,5日間という恣意的な境界を作った科学的根拠があるかということです.何らか過去の論文があり,5日間のアビガン投与で消えているという報告があればそのデータを利用することで科学的になります.しかし,この5日間を決めた根拠がなければ証明することは難しいかもしれません.
  2. ここは提案です
    もしも86例まで症例が増えても統計的に有効性が証明できない場合のことが研究開始前から決められているかどうかです.例えば,予想より実際の効果量は低く,症例数設定が足りなかった場合も,その効果量を統計家ではなく臨床医が眺めてみて効いているのではないかと思った場合は,大きな副作用がなければ使用できる方向に舵を切ることです.
    何しろ,
    ①5日間の境界は科学的ではない
    ②評価(エンドポイント)である6日目のPCR陰性は本当に意味があるのか
    という問題があります.
  3. 本来(真)のエンドポイントは死亡や重症化です
    6日目のPCR(陰性)は代理のエンドポイントとして正しいでしょうか? 研究のデザインに大きな問題があるわけですが,緊急事態ですからそのような研究デザインもやむを得ないと思います.統計的に有意でなかった場合に,臨床医としてどのように判断されるかに期待しています.