重症心身障害ワンポイントレッスン(2) 排尿障害

排尿機構の発達なぜ子どもがおもらしをするのでしょうか?下に2枚の絵を載せました。図1が「おとな膀胱」で,図2が「あかちゃん膀胱」です。まず「おとな膀胱」をもつ成人の排尿行動について考えてみます。膀胱に尿がたまると、その情報はまず脊髄の神経…

重症心身障害ワンポイントレッスン(1) 発熱とクーリング、解熱剤

発熱 発熱は生体防御反応の一つであり、発熱は生体に決して不都合なことばかりではない。発熱中枢のサーモスタットの設定温度は感染症等によって上げられ、実際の体温がその設定温度に到達するまで①四肢末梢の血管を収縮させ、②振るえる(振戦)ことによる筋…

ヒトの歴史と微生物

1982年春に1年目の医師としてカトリック医療施設に赴任しました.施設内には多くのシスターがいて,産婦人科が主たる診療科の一つで年間1200例の分娩がありました.シスターの何人かは助産婦(助産師ではなく)でした.庭には畑があってシスターが畑仕事をし…

ヒトの常在菌とビタミンK

哺乳類にはビタミンKを合成する酵素がない.2つのビタミンKが天然に存在し,植物の葉緑体に含まれるフィロキノンと,細菌が産生するメナキノンがあり,大腸菌などによるメナキノンの産生は哺乳類にとって重要なビタミンK供給源である. 緑葉野菜の摂取と,腸…

自閉スペクトラム症(ASD)の病態の本質

ASD病態の本質 ASDの病態の本質は「自己と他者との関係認識の特異性」で、これによってすべての症状を説明できるように思います。不完全で、今後どんどん修正しなくてはいけないと思いますが、フロー図を書いてみました。(フロー図の変更;2023.11.14)

ヒトという生き物

ゴールデンウィークの前半は、長男家族(孫3人)と、上村家のルーツである琵琶湖湖北へ旅し、おやじの墓から少し遺骨を盗んできました。近くの墓におふくろと同居させるためです。墓石の後ろに1か所穴がありそこから遺骨を取り出します。本来は役場に届け出…

血栓形成とネフローゼ症候群

血栓形成反応は,血液凝固反応と血小板活性化反応が相互に絡み合って起こる。 APS(高リン脂質抗体症候群)は一般に過凝固の病態と考えられているが、習慣性流産の予防にアスピリン(抗血小板剤)が投与されて有効である。 一般的に、動脈血栓症は血小板血栓…

自分を“だいじ”に思える

ありのままの自分とは何か、きっと生まれた時に決まっているいろいろな質のことです。成人した時の顔立ちだって、成人した時の身長だって、敏感か鈍感かだって、おっちょこちょいか慎重かだって、認知が視覚優位か聴覚優位かだって、いろんな質が生まれた時…

思春期の小児慢性腎臓病患者の診療科について

Ⅰ)成人科転科の時期 Watsonらは2011年に国際腎臓学会と国際小児腎臓学会の移行についての共同声明を出し、成人施設への転院・転科は移行プログラム(心理的支援、自己支持、自立した医療行動、教育的・職業的計画、健康=SOCとライフスタイル、性的健康)の…

どうなってるの,日本のCOVID-19対策

またCOVID-19について考えてみます. オミクロンに対するワクチンは本当に要るのか何度も繰り返しますが(*_*;,たしかに変異はどの方向にも変異します.しかし生き残る…つまり進化する方向は基本的に決まっています.これは哺乳類などの動物もウイルスも同じ…

オミクロンは命にかかわるのか

東京都のCOVID-19のデータをみます. 1/5~1/11の1週間の平均一日発症者数: 890人/日 1週後の1/12~1/18の1週間の平均一日死亡者数: 1人/日 COVID-19のうちオミクロン率を8割(デルタ率は2割)と仮定し,デルタの死亡可能性を1%とすると,デルタによる死…

COVID-19の重症度の変化、ワクチン接種の効果についての考察

イギリスのCOVID-19の感染症者のピークと、その後の死者のピークを波の時期の違いによって比較してみます。 昨春 今年初 今秋 感染者数 2020年4月7日 2021年1月6日 2021年10月23日 5264 65002 44985 死亡者数 2020年4月14日 2021年1月20日 2021年11月4日 107…

単一症候性夜尿症に積極的治療は避けるべきと考える理由

単一症候性夜尿症に積極的治療は避けるべきと考える理由について説明します 新生児の反射的膀胱(赤ちゃんの膀胱)から,成人の意図的膀胱(成人の膀胱)に完全移行するのは,定型的発達の小児で3~4歳と言われている(図参照).だから,「5歳を超えて,昼…

COVID-19に対する対策(規制解除)のシミュレーション

経済的なことを考えると,いずれ必ず社会を規制全面解除しなくてはいけません.冷静に考えると,あれだけの事故があっても原子力発電は継続しているし,自動車事故は無くなっていないのにどんどん車は作るし,あれだけ副作用があっても抗がん剤は使います.…

ワクチン関連死

75歳の姉から,“ファイザー社のワクチンで190人死んでる”ことを理由にうつことを迷ってるとメールがありました.こいつは,やっぱりバランスよく考えることができないやつだと呆れながら,医療関係者ではないから仕方ないかとも思います.2つの問題があると…

腎臓小児科医のためのワンポイントレッスン(2)

逆流性巨大尿管症とhigh grade VUR 膀胱尿管逆流症(VUR)は小児の上部尿路感染症の原因として最も多いものです(最も重要なものではありませんが…).そしてグレード分類があって,排尿時膀胱尿道造影(VCUG)時の逆流の様子によって以下のように分けられま…

新型コロナウイルスの感染力と病原性 - 再考

RSウイルスの流行が季節はずれに起こっています.週当たりの感染者数でみると1年前からずっとほぼ0だったわけですが,今年の1月前後から増え始め,例えば大阪府では4月のピーク時には700人/週となっています.各都道府県の週当たりのRSウイルス感染者数のデ…

今後のコロナはどうなるか(ワクチンの拡がりと重症者の発生)

2021年2月21日 テレビで,「若者たちにもワクチン接種率を上げるために,何らかのインセンティブを与えるべきだ」と議論されています.なんて愚かな議論でしょうか.ワクチンが進み,今後のコロナがどうなるかを考えてみます. まず,いくつか前提を書きます…

高齢者とコロナワクチン

2021年2月4日 高齢者は全員コロナワクチンを接種しなくてはいけないということについて,今から皆さんを説得します. 高齢者の仲間入りをして3年になります.高齢者の社会的な役割を考えながら感じたことです. 昔は人生50年と言いました.COVID-19感染拡大…

小児と新型コロナワクチンについて

皆さん,あけましておめでとうございます. COVID-19感染が過去最高に拡大する中,ようやくワクチンを接種できる状況が近づいてきました. 私の地域の小児科医の集まりで,小児は新型コロナワクチンを接種すべきか否かという議論がありました.私の個人的な…

加齢と大脳皮質による制御

歳をとってくると,大脳皮質の制御がきかなることを,身をもって経験しています. スキャモンの発育曲線の神経系をみると,4歳くらいで8割くらいは成熟します.残念ながらスキャモンの発育曲線に20歳以降の表現はありません.きっと神経系を人生全体で表現す…

コロナ濃厚接触者のPCRの問題点

コロナ濃厚接触者がPCRできちんと診断されているかどうかを考えます. 下図は今日本で起こっている状況に近いのではないかと思います. 例えば1000人がPCR検査を受けた場合の状況です. コロナ患者とPCR 今回の主題ではありませんが,1000人検査をするとコロ…

腎臓小児科医のためのワンポイントレッスン

治療方針を決定するのは,医師ではなく患者家族である Ca, P再考(骨粗鬆症や骨ミネラル代謝異常) DES, BBDの定義(排尿障害) CKDと食塩摂取量 血管内溢水の評価に心エコーの感度が悪い理由 「腎臓病小児のマネジメント 実践のための数学的アプローチ」と…

アビガンと橋本文書

5月に一度掲載したのですが,「アビガンと橋本文書」を削除してしまいました(*_*; 実は自分の所属する名古屋市立大学小児科同門会の今年の同門会誌に,このブログの橋本文書のことを載せていたことに気が付いて再掲することにしました. 内容は,COVID-19に…

子育てー小児発達外来を始めて1年ー

一宮医療療育センターで小児発達外来を始めて1年が経ちました. 1年間に学んだこと,感じたことを整理してみたいと思います. 自閉スペクトラム症(ASD)を説明するためのキーワードは,1.不安・恐怖,2.不器用,だと思いました.それぞれを個別に,また絡ま…

PCR陽性のあなたは本当にCOVID-19に感染しているのだろうか? ―ベイズ定理を使って―

以前にPCRの特異度を90%で計算しました.今回はこの特異度を99%と考えて検討してみます. 事象A:COVID-19に感染している. 事象A*:COVID-19に感染していない. 事象B:PCR陽性である. 事象B*:PCR陰性である. 一番外の四角は,検査を受けた人全体です…

「Withコロナ」の定義

医療の世界では,議論を進めるときに言葉の定義を明確にしなくてはいけない. 「With ころな」の定義はどうだろうか? 正確には, ① “新型コロナウイルスとの共存・共生を意味する価値観・世界観” だろう. 基本的には,このような弱毒のウイルスについては…

COVID-19の進化について

久しぶりのブログ更新です.臨床研究に関係ないのでしばらくしたら消してしまいます. COVID-19肺炎は,約6時間で既感染細胞から新たな感染細胞を作り,1日でウイルス増殖の4サイクル分のスピードで感染が肺内で広がると考えられるそうです. 一応倍化スピー…

アビガン臨床試験を想像してみよう

1.今回のアビガン臨床試験の臨床疑問,研究疑問を考えてみよう 臨床疑問:アビガン5日間投与は新型コロナウイルス駆逐に有用か 研究疑問: 【患者】 PCR陽性の軽症コロナ感染者 【介入群】 アビガン5日間投与(投与群) 【比較群】 アビガン非投与(非投与…

臨床研究の進め方―応用編Ⅰ―  【Ⅰ-2 症例数設定の意味(t検定を使って)】

しつこいようですが,再度基礎編の要点を簡単に述べます. p値はn数に大きく依存する 母集団から,たくさんの標本をとってくればくるほど,言いたいことが言えてしまいます.症例数設定するということは,研究者はこのくらいの比率であれば臨床医として意味…