小児と新型コロナワクチンについて

皆さん,あけましておめでとうございます.

COVID-19感染が過去最高に拡大する中,ようやくワクチンを接種できる状況が近づいてきました.

 

私の地域の小児科医の集まりで,小児は新型コロナワクチンを接種すべきか否かという議論がありました.私の個人的な意見を述べたいと思います.

この考え方の基本に流れる私の考え方を,まず羅列しておきます.

 

  • 新型ウイルス出現は繰り返されてきた.
  • 新生児,乳児,幼児など小児にとって,ほとんどのウイルス感染は新型ウイルスである.
  • 小児の免疫系は新型ウイルスに対応できる.
  • 成人がウイルス感染に強い理由は,それまでの感染歴にある.
  • COVID-19は他の風邪ウイルスと病原性(毒性)は変わらない.
  • ウイルスの進化は,「感染力が上がり病原性が下がる」方向が原則である.
  • 新型コロナワクチンの対象から小児や若年成人は除外すべきである.
  1. 新型ウイルス出現は繰り返されてきた.
    地球の歴史,動物の歴史,人類の歴史上,当然ながら新型ウイルスの出現は繰り返されており,現在地球上にいるウイルスは全て新型ウイルスの時期があったわけです.過去には科学がそのレベルにないために新型ウイルスかどうかわからず,「なんか今年の風邪は年寄りが多く死ぬな~」と感じていたのでしょうね.
  2. 新生児,乳児,幼児など小児にとって,ほとんどのウイルス感染は新型ウイルスである.
    母親からの移行抗体が半年間有効であるとしても,それ以降のウイルス感染の多くは子どもたちにとって新型ウイルスです.そこが成人とは大きく違うところです.
  3. 小児の免疫系は新型ウイルスに対応できる.
    スキャモンの発育曲線のリンパ系は抗体量などで表現しているのでしょうか? 実際はかなり違うような気がします.乳児期早期までは別として,それ以降の小児は初めての感染症にしっかり対応できるように進化しているはずです.つまり小児の免疫系は新型ウイルスに適応できるようになっていると思います.それが合目的的です.
  4. 成人がウイルス感染に強い理由は,それまでの感染歴にある.
    成人の免疫系は老化しています.しかし,ウイルス感染で皆が重症化するわけではありません.それまでの人生の感染歴で免疫担当細胞には様々な記憶があるからです.老人が英会話を新たにやる場合や,新たな楽器に挑戦しても大してうまくならないことと同様に,しかも若いころからある楽器をやってくると老人も上手であることと同様に,新型ウイルスに全く記憶のない老人はうまく対応できないのです.このことから考えると,小児や若年成人の一生を考えると,今新型コロナに罹患しておくほうがhappyなような気がします.このことについては後述します.
  5. COVID-19は他の風邪ウイルスと病原性(毒性)は変わらない.
    COVID-19が他の風邪ウイルスより重症ウイルスかどうかは,子どもたちが重症化するかどうかを見れば解答が分かります.子どもたちが重症化している様子はなさそうです.つまりCOVID-19は他の風邪ウイルスと病原性は変わらないのだと思います.ただ新型ウイルスに弱い(過去の未学習領域に弱い)老人にとっては重症化してしまう危険があるということです.同じ老人でも過去のいろんなウイルスの感染歴によって反応の仕方は変わりそうですが….そして,きっと日本中に新型コロナに感染しているが無症状の子ども(不顕性感染の小児)がたくさんいるような気がします.きっと,日本には4万人くらいは小児の新型コロナ既感染者がいるのではないでしょうか.と言っても累計で0.2%ほどですけどね.
  6. ウイルスの進化は,「感染力が上がり病原性が下がる」方向が原則である.
    もちろん変異はどの方向にも起こると思います.しかしウイルスの生き残りは「感染力が上がり病原性が下がる」の方向以外にありません.病原性が上がる方向の変異を起こしたウイルスは宿主とともに駆逐されます.だから,基本的には新型コロナの感染は拡大し,重症化については終息していくものと思われます.
  7. 新型コロナワクチンの対象から小児や若年成人は除外すべきである.
    とにかく感染したら重症化する人たち(老人や基礎疾患のある人)にワクチンをうつことが重要です.小児を含めて若年者は,若いうちに自然感染するべきだと思います.自然感染した時と,ワクチンによる免疫獲得は質が違うというのが前提です.子どもたちは,彼らにとっての新型ウイルスに感染しておくことが,その後の人生の対感染症の力をつけておくことにつながる気がします.